ルイス・ヴィトン
20歳の頃、163号線の焼肉屋でバイトしてました。
ランチタイムのバイトを終えて、夕方におうちに帰り、冷蔵庫開けて麦茶飲んでたら、うちのおかんが帰ってきて、
『ちょっとカズヒロ!これ見て~♪』
嬉しそうにブランドもんの財布を見せてきました。
『どないしてんな?そんなブランドもん?』
『えぇやろぉ♪ルイ・ヴィトンやで♪』
『ブランドもんなんか珍しいな!なんぼやったん?もろたんか?』
『えっ!?』
『だから、なんぼやってんな?』
『千円。』
『はぁ?それパチモンやん。』
『やっぱり、分かるんや。』
『当たり前や!!ヴィトンが千円なわけないやろ。ルイス・ヴィトンってかいてるしっ!』
普段、ブランドもんとかはまったく興味もないし、俺たち兄妹やおとんにはそれなりにえぇもん買ってくれてたのに、自分は安い服やバッグを買っては大事に大事に使ってるおかんでした。
しばらくして、仕事で大阪を離れた時に、1人でブラブラ自分の服を探しに街を歩いていました。
1軒、ヴィトンのショップを見付けて、きたないジーパンに、よれよれのTシャツやったし、そんなブランドのショップには入ったこともなかたけど、入ってみました。
店員さんからしたら、こいつ絶対買わへんやろな。って格好してたのに、さすがに一流ブランド!
『お探しのものがありましたら、お声かけてくださいね。』
その中に1個、安くはないけど、頑張ったら買えるぐらいのバッグを見付けました。
手持ちもないし、銀行行っても残高足らへんけど、ローン組んで、今月ちょっとビール控えて、今月いっぱい残業したら買えるぐらいの値段やったから、初のブランドもんのバッグを買いました。
何日か後におかんから電話で、
『こんなん、どないしたん?お金は?』
やっぱりそこか
『ローン組んだ!』
『払えんのか?』
『なんとかなる!』
『ありがとうな。大事にするわ。』
うちのおかんはこの前、誕生日やったから、久し振りに電話した時に、
『そう言えば、昔に買ってあげたバッグどうした?』
『あるよ!』
『どこに?』
『箱になおしてある』
『なんで使ってへんねんな?』
『毎日使ってるよ。カズヒロが買ってくれたもんやから、使ったら毎回、キレイに拭いてから箱になおしてんねん』
100点満点中、何点ぐらいの妄想の話でしたか?
久し振りにさ、テレビのニュースを見てました。
暗いニュースや、明るいニュースいっぱい読んでたけど、
俺にはそんなこと、どうだっていいんですよ。
ただ、五体満足であなたが笑ってくれてたら。
それだけで俺は幸せです。